異年齢保育ってどうなの?子どもの発達と保育士の言葉がけのコツ

このコラムを読んでいる皆さん、「異年齢保育」と聞くとどんな印象をお持ちですか?「発達段階の違う大きい子と小さい子を一緒に保育するなんで難しそう」とか、「いろんな保育が一度にできて楽しそう」とか、どの保育士にとっても興味深いのが異年齢保育と言えますよね。

多くの保育園では幼児クラスで多く取り入れられてきた保育方針で「縦割り保育」ともよばれて、同年齢ごとではなく、違う年齢の子供たちと同じ部屋で保育を行う方法です。

異年齢保育には、子供の発達を考えると良い事もありますが、もちろん難しい場面も多く出てきます。保育士の考えや言葉がけ、スキル1つでいろんな可能性がある「異年齢保育」についてクラス運営の方法、ちょっとしたコツなどを園長という立場からお伝えできればと思います。

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【子ども同士がお互い刺激しあって成長していくこと】

私が幼児クラスを担任していた時の経験をシェアします。異年齢保育の良さや醍醐味とも言えるのは、何と言っても「年上の子どもたちが年下の子どもたちの面倒を見ながらお互いに成長していくこと」でしょうか。

年上の子どもたちにとって年下の子どもたちのお世話をするというのは、自分も以前にお兄さんお姉さんに手伝ってもらったということを覚えていますから、今度は自分たちが年下の子供たちのお世話をしたくて仕方ないことなのです。

たとえば、年下の子どもが手洗いをしていると、年上の子どもがペーパータオルを取ってあげたり、年下の子どもが上着のボタンがうまくできないと年上の子どもが手伝ってあげたりします。 また、給食の時にうまくみかんの皮をむけない時、年上の子どもが代わりにむいてあげたり、年下の子どもたちが折り紙の折り方を教えてと年上の子どもたちにレクチャーをお願いしたり、ブロックやかるたなどの片付けを一緒にしてほしいと頼る場面も日常です。

本当に一日のいろんな場面において子ども同士でお互いに助けあう姿も多く見られ、年齢を超えて関わる子どもたちの姿がとても微笑ましく見えました。

何より年下の子どもたちにとって年上の子どもたちは「憧れの存在」でもあります。年上の子どもが粘土で恐竜の大作を作った時は、年下の子どもたちみんなが「すごーい!」と歓声をあげて見入っていました。

年上の子どもたちは年下の子供たちよりお兄さん、お姉さんだと自負もあり、負けたくないといろんなことに対してやる気にもなります。いろんなことを年下の子どもたちに教えながら自分も遊びが広がっていくのです。

私が3歳から5歳までを1クラスにした異年齢保育クラスの担任をしていた時のエピソードを紹介します。元々負けず嫌いな性格の持ち主でもあった5歳のA君。そんなA君は、なわとびで多く跳ぶことができませんでした。

最初は年下の子どもたちより跳べる回数も少なく、そのこと悲しくてたまらなかったのでしょう。「1回でも多く跳びたい」と一人でずっと練習していました。自分はお兄さんだから負けたくない、カッコよく思われたい、A君なりにいろんな感情があふれてきて、年下の子どもより跳べない自分が悔しかったようです。

「なわとび練習したい!」と私にも何度も言ってきて、ずっと練習に付き合っていました。「お兄さんだから跳べるようになりたい」という思いが練習するモチベーションとなって、結果的にたくさん跳べるようになりました。それ以後もA君はぐんと成長し、いろんなことに興味が湧いて表情もイキイキしてきました。これがA君にとって、「自ら物事に取り組むこと」を学ぶきっかけになったように思えました。

【保育士としての配慮は?】

異年齢保育を実践していく上で配慮が必要なことがいくつかあります。まず最初は「年上の子どもが年下の子どもに対して威圧的にならないように見守ること」です。

どうしても乳幼児期だと、年上の子どもの方が体は大きいです。年下の子にとって自分より背が高い年上の子どもの存在は特別です。だからこそ年上の子どものが「○して!」「△はダメ!」と年下の子どもに怖い態度や発言をしてしまうと、年上の子どもがまるでボスのような存在になってしまい、年下の子どもは常に言うことを聞かないといけないと怯えて過ごすことになりかねません。

年上の子どもが年下の子どもたちに命令口調になっていないか、家来のような扱いをしていないかを見守っていくことがとても大切です。

二つ目は保育士の「言葉がけの配慮」です。もし年上の子どもを叱る場面がきたとします。その時は年下の子どもに叱っている声が聞こえないようにしましょう。年上の子どもで羞耻心や自尊心が芽生えている子だと、自分はお兄さんお姉さんだからという思いが芽生え、年下の子どもに自分が叱られているのを見られることによって傷ついてしまう場合があります。

そんな子どもの気持ちを大切にするために、叱る時の配慮が必要です。そして逆に、褒める時は「年下の子どもの前」が効果的です。年下の子どもたちから憧れの眼差しを感じると、年上の子どもはとても意欲がでて自信がみなぎります。異年齢保育をしていく上で保育士としての言葉がけはとても重要。「叱る時は子どもと1対1」で、褒める時は皆の前で行うことを意識してみましょう。

【まとめ】

異年齢保育を実践していく中で保育士として一番知っておくべきことは「子どもの発達とその特性」です。3歳の子どもと5歳の子どもとではできることも経験値も違います。

たとえば制作で使用するハサミでも、3歳の子どもにとっては握って切るという操作は難しい作業です。しかし5歳になると切るという連続操作が発達上容易にできるようになってきます。

環境作りにおいて子どもたちが好きな絵本やおもちゃを置く場所も3歳の子どもが取りやすい高さと5歳の子どもが取りやすい高さは違ってきます。年齢別の子どもたちの興味や遊びの様子で設定も大きく変わってきます。

そのような発達段階を理解して異年齢保育クラスの運営を行っていくことで、保育士がいつもどこに立って全体を見ていけば良いか、どんなおもちゃを用意してどこに置いておけば良いかというのがとても重要になってきます。

どうしても異年齢保育のクラス運営をしていくと年上の子どもたちが年下の子どもたちの遊びを引っ張る設定にしてしまうことが多くあります。しかし大人の都合で毎日子どもたちが過ごす部屋の環境を作ってしまうのではなく、どの年齢にも合った遊びを提供できる環境を作り、そして事故が起きないような配慮をしていくことが何より大切です。

ライタープロフィール

白川 佳代さん


保育士歴10年以上。自身の子育て経験を生かし、新卒保育士や子育てに悩む保護者の相談業務にも多く携わる。現在は認可保育園の園長。また、当サイトにコラムを多数執筆中。

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