【保育士の配置基準見直しとは】現在の基準と改善に向けた動きや展望<2023年3月最新>

保育士の配置基準の見直しを求める声が多く挙がっていましたが、政府が配置基準を改善する方向で調整に入っていることが報じられました。時代が急速に大きな変化を遂げている中、日本における保育士の配置基準は、1948年から75年近くもの間1度も改正されていません。過酷な配置基準の見直しや改善を指摘する声は以前からありましたが、ようやく政府が検討に入ったことは喜ばしいことです。その背景には、最近立て続けに報道され問題となった、バスに置き去りにされて亡くなった事故や保育士による不適切保育の問題があります。 いつどのように見直しや改正がされるか、現段階(2023年3月)ではわかっていませんが、今回の記事では現在の「保育士の配置基準」について改めて解説し、今後の展望について考えてみたいと思います。

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保育士の配置基準とは

保育士の配置基準とは、保育士1人当たりが対応できる子どもの人数の基準のことで、厚生労働省の「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」第33条に定められています。子どもの安全の確保のために定められたもので、保育施設の運営に当たり満たさなければならない基準の1つです。定められている基準は年齢によって異なり、国が定めた配置基準とは別に、各自治体によって配置基準が定められている場合があります。
保育士不足が問題となっている近年は配置基準を満たすことが難しい場合があり、問題視する声や待機児童の解消に向けても配置基準の見直しを求める声が高まっていました。

国が定めた保育士の配置基準

国が定めた配置基準は、以下の通りです。
子どもの年齢     子どもの人数:保育士の人数
 0歳児             3:1
1〜2歳児             6:1
3歳児              20:1
4歳児以上            30:1

年齢が低いほど保育士の援助が必要なため、0歳児は子どもの3人に対して保育士は1人となっており、年齢が上がるにつれて保育士1人に対する子どもの人数は多くなっています。上記の各年齢の基準を下回らないことが定められているほか、子どもの年齢や人数にかかわらず常時2名以上の保育士を配置することが必要とされています。基準を満たさなければ、認可はされません。

各自治体による配置基準

国が定めた配置基準とは別に、独自の配置基準を定めている自治体があります。各自治体の配置基準は、国が定めた基準を下回ることはできません。そのため、さらに安全の強化や保育の質の向上、職員の負担軽減のために国が定めた配置基準よりも厳しい基準を設定しているのです。

園の運用形態による保育士の配置基準

平成27年4月から施行された「子ども・子育て支援新制度」により、認定こども園ができるなど、未就学児をもつ保護者にとっては保育を利用する幅が広がりました。子ども・子育て支援新制度によるそれぞれの認可事業によっても、保育士の配置基準には以下のような違いがあります。

幼保連携型認定こども園

小学校就学前の子どもに、教育と保育を一体的に行う幼保連携型認定こども園の配置基準は、認可保育園と変わりません。ただし、幼保連携型認定こども園では、保育士と幼稚園教諭両方の資格を持った保育教諭を配置することが必要となります。

小規模保育園

0〜2歳までの園児が通い、定員を6〜19人と定められている小規模保育園A〜C型までありますが、それぞれの配置基準は以下の通りです。

A型
保育所の分園などによるA型の小規模保育園は、職員全員が保育士資格を所有していなければなりません。特例として、保健師や看護師も保育士として認められています。職員の配置基準は、認可保育園の配置基準+1名となっています。
B型
A型とC型の中間の形態であるB型の小規模保育園は、全職員の半数以上の職員が保育士資格をもっていることが求められており、保育士以外の職員には研修の実施が求められています。A型同様、国の配置基準よりも1名多く配置しなくてはなりません。
C型
グループ型小規模保育を行うC形の小規模保育園は、市町村などが実施する研修を修了した家庭的保育者の勤務が可能です。定員はA、B型よりも少ない6〜10人以下で、0〜2歳児3人に対して保育者1人の配置が義務付けられています。尚、補助者を置く場合は、園児5人に対し、保育士2人の配置基準です。
出典:「小規模保育事業について」

家庭的保育事業

自宅などの小規模な場所で保育を実施する家庭的保育事業では、定員は5人以下と定められています。小規模保育園と同じように、子どもの年齢は0〜2歳で、子ども3人に対し、保育士1人(補助者を置く場合は、園児5人に対し、保育士2人)を配置しなければなりません。

居宅型訪問保育事業

保育者が子どもの自宅を訪問して保育を行う居宅型保育訪問事業は、自治体が実施する研修を受けた保育士や、保育士資格をもっていなくても市町村長から保育士と同等の技術や知識を有すると認められた人が保育を行うことができます。配置基準は、子ども1人に対し保育士も1人です。

認可外保育施設

児童福祉法に基づく都道府県知事などの認可を受けていない保育施設では、認可保育園の配置基準をベースとしていますが、一部緩和されています。認可保育園では保育士全員が有資格者でなければなりませんが、認可外保育施設では保育者の3分の1以上が保育士か看護師の資格を持っていればよいと定められているのです。ただし、すべての保育者が保育士または看護師の資格をもっていることが望ましいとされており、無資格の場合は家庭的保育者が推奨されています。

1日に保育する乳幼児数が6人以上の施設
保育時間が11時間以内であれば、配置基準は認可保育園と同等ですが、11時間以上の場合は、保育されている園児が1人である場合を除き、常時2人以上の配置が必要です。
1日に保育する乳幼児数が5人以下の施設
保育者1人に対して乳幼児は3人以下とされ、家庭的保育補助者と一緒に保育する場合は、乳幼児数は5人以下と定められています。 ベビーシッターなどの居宅訪問型保育の場合は、乳幼児1人に対し保育者1人の配置が必要です。
出典:「認可外保育施設の質の確保・向上について」

保育士の配置基準緩和措置

保育士の配置基準は1948年から75年近く変わっていませんが、近年の待機児童問題の深刻化による保育士不足や保育の受け皿拡大などの需要に応じ、2016年4月から保育士の配置基準の規制緩和措置が以下のように実施されました。

1. 朝夕など児童が少数となる時間帯には、保育士2人のうち1人は子育て支援員研修を修了した者に代替可能。
2.保育士の代わりに、近接する職種である幼稚園教諭、小学校教諭、養護教諭を代替職員として配置可能。
3.8時間を超えて開所していることなどにより、認可の際に最低基準上必要となる保育士数を上回って必要となる保育士数については、子育て支援員研修を修了した者等に代替可能。
※1と2については、職員全体の3分の2を保育士の配置が必要。
出典:「保育所における保育士配置の特例(平成28年4月施行)の実施状況調査について(平成28年10月1日)

保育士の配置基準改善に向けた状況と今後の展望

保育士の配置基準改善に向けたさまざまな動きが報道されています。2023年3月1日には、保育士などによる団体が、配置基準の改善を求める要請書を内閣府と厚生労働省に提出しました。
団体は「今の配置基準では、災害時に子ども達の命を守れないという声が多く挙がっている。自分達を守ってくれると信じている子ども達の思いに応えるためにも、配置基準を変えてほしい」との保育士の声や、「保育士と子どもが楽しく安全に過ごせるようにしてほしい」という保護者の声を伝えています。

また、保育・教育施設向けICTサービス“コドモン”は、保育士の配置基準に関するアンケートを実施しました。アンケートの結果によると、「配置基準の改善により、不適切保育が少なくなる」と回答が79.1%となっています。

そして、85.9%の人が「保育士の人手が足りないと、管理的な保育になりがちだ」と回答。現在の配置基準によって大きな負担になっていることは、「保育計画等の事務作業」「職員間での相談や話し合い」「研修」が上位に挙がっています。

また、自治体により国の配置基準よりも手厚い基準で働いている人達からは、配置基準を手厚くしてよかったこととして「保育の質の向上につながった」「子ども1人ひとりに丁寧に接することができた」「保育士に余裕ができた」「残業の減少や離職率の低下など働き方の改善につながった」などの利点が挙がりました。

さらに、子どもの命と安全を守れないと思う場面として最も多かったのは「災害時」で82.8%。「散歩等の園外活動」73.8%、「プールや水遊び」65.6%、「防犯上」58%、「早朝や夕方の保育」50.8%と続いています。
「不適切保育のニュースや報道により、保育現場の業務にあたる際、ストレスや不安を感じるようになった」との回答は77.5%となっています。

以上の動きを見ても、保育士の配置基準の改善は早急な課題であることがわかります。現場からの強い要望が高まり、政府が改善に向けて動き出しましたが、改善に向けては予算面などさまざまな問題があるでしょう。
しかし、未来を担う子ども達はもちろん、保育士や保護者のためにできるだけ早急に改善されることが待たれています。配置基準の改善に向けた今後の動きに注目していきましょう。

ライタープロフィール

西須 洋文さん
30年以上、保育士として保育園やこども園に勤務。現在はWebライター、リトミックや親子遊びの講師などとして活動中。
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