乳児クラスの噛みつき、どう対応すべき?
- 保育士お役立ち情報
- 2020/05/11
保育園という集団生活の中を送る乳児クラスで一番起こるトラブル、それは「園児同士の噛みつき」です。発達段階で言葉が出ない乳児、特に1、2歳クラスはおもちゃの取り合い、場所の取り合いでガブッ、大好きな先生の気を引くためにガブッ、意味もなくガブッ、保育士たちは日々噛みつきを防ぐための工夫をし、どのようにすれば噛みつきを無くし子どもたちが楽しく過ごせるか一生懸命考えています。あの手この手で噛みつきをなくすために努力をしていても起きてしまった噛みつきについてどう対応しているか、私の経験を踏まえお伝えしたいと思います。

子どもにだって子どもなりの主張がある!
噛みつきが多くなる1,2歳クラスの子どもたちは自我が芽生えて自己主張が多く出る時期です。靴を履こうとしている時や着替えを保育士が手伝おうとすると「自分でやる!!」と怒ったり、着替えの時だって用意した服が気に入らないと「違う!!」と投げてしまう姿も見られます。そんな自我が芽生えた子どもたちは「やりたい」「こうしたい」という思いは強くあるのですが、まだうまく言葉で言い表すことはできません。自分が使っていたおもちゃをお友達に取られた時、おしゃべりできるぐらい成長した子なら「やめて!今使ってる」とか「いやだよ」と言えるのですが、話せない子にとってはいきなりおもちゃを取られてしまった時、とっさの反応として「かみつき」が出てしまうのです。
子どもの発達段階として手より口の方が早く成長します。そのため口が先に出て「かみつき」という行動で自分の思いを出してしまうことがあるのです。決して乳児期の子どもたち全員に見られる姿ではありません。噛みつきをせずにうまく自分の思いを出せる子どももいます。私は噛みつきをする子が悪い子とか手のかかる子だとは思っていません。また、家庭での愛情不足が原因で噛みつきが多く出るとも思っていません。ただうまく自分と他の子どもたちとどう関われば良いのか分からないだけだと思っています。
噛んだ子、噛まれた子に対してそれぞれどんな対応をしている?
噛みつきが起きないよう、保育士たちが近くについて見守っていても起きてしまった噛みつき。そんな時、噛んだ子に対して「◯くん、△したかったの?◯くんが噛んだお友達、痛くて泣いてるよ、次は噛まずにかしてって言おうね」と噛んだ子の気持ちを代弁します。大半、噛みつきは思いを言えず、どうして良いか分からないので起きるのだと思います。
噛んだ子に対して噛みつきは良くないことだとしっかり丁寧に伝え、噛まれた子が痛い思いをしていることも伝えます。大事なポイントとして「次はかしてって言おうね」などのこういう時はこうすれば良いということをその場ではっきり教えてあげることです。子どもの成長とともにお友達との関わり方も経験し、自然に「かして」などの自分の思いを伝えられるようになってきますのでそれまで根気よく伝え続けます。
そして噛まれた子に対しての言葉がけですが、急に噛まれた訳ですから驚いたのと恐怖とで情緒不安定になってしまうのも仕方ありません。そんな時も「急に噛まれてびっくりしたね、◯くん、使いたかったみたいだけど上手く貸してって言えなかっただけなの」と急に噛まれて驚いた気持ちを受け止めて、噛んだ子の気持ちも代弁します。噛まれた跡が残らないように流水で冷やすのですが、冷やしながら「守ってあげられなくてごめんね」と近くで見ていた保育士としての気持ちも伝えます。噛んだ子、噛まれた子、双方のケアとして大切なのは「気持ちを代弁してあげる」ということですね。
噛んだ子、噛まれた子双方の保護者にはどう伝える?
噛みつきが起きた時に頭を悩ませるのが保護者への伝え方です。自分の子が噛まれた跡を見ると誰だって「誰がこんな跡が残るほど噛んだのですか!」と腹立たしく思うでしょうし、最近では「噛んだ子の名前を教えてください!」とクレームになるケースもあります。そうは言っても乳児期の発達段階ではよく見られる姿なので噛まれた子も時には噛む子になるかもしれません。この時期の子どもたちにとって加害・被害という認識は大人ほど強くはないのです。
各保育園の方針によっていろんな対応があると思います。私が勤める保育園で噛みつきが起きた時に行った噛んだ子、噛まれた子、双方の保護者への対応をお伝えします。まず、噛まれた子の保護者への伝え方として、噛み跡が残っている、残っていないにせよ正直に噛みつきが起きてしまったことと、お子さんに痛い思いをさせてしまったことについて心から謝罪します。よく噛み跡が残ってなければ保護者に何も言わなくて良いのではという考えもあります。
しかし私は、噛まれた子にとって不意打ちに痛い思いをさせてしまったのですから、そこは謝罪をすべきだと思いますし、帰宅後にお風呂で温まった時に噛み跡が浮き出た時、それを見た保護者は園から何も聞いてないと不信感に思うかもしれません。真摯な姿勢で謝罪をし、噛みつきが起きてしまった状況を伝えます。噛みつきが起きた原因がおもちゃの取り合いだったのか、何だったのか、その時横に保育士はいたのか、噛みつきが起きた後にどのような処置をしたのかまで丁寧にお伝えします。
保護者から噛んだ子の名前を教えて欲しいと言われても「この時期の子どもたちにとって言葉が上手く話せずに思わず噛んでしまうことがあります。決して嫌いで噛むとか、いじめて噛むとかではありません。」と発達過程であることを伝え、噛んだ子の名前は言いません。次に噛んだ子の保護者に対しての伝え方です。園によっては噛んだ子の保護者へは噛んだ事実は伝えないという方針と取っている場合もあるかもしれません。
私の考えですが1,2歳になるとお友達の名前を言えるようになります。噛まれた子が帰宅後に「◯ちゃんに噛まれた」と言ってしまうこともありますし、噛む様子を見ていた他の子が帰宅後に噛みつきの話をしてそれを聞いた保護者から噛んだ子の保護者へ内容が伝わるかもしれません。保護者同士のトラブルを防ぐためにも、そして何より保護者として園での我が子の様子を把握してもらうためにもケースバイケースではありますが噛んだ事実は伝えるようにしています。
まず園で噛みつきの事実だけを先に伝えると保護者も自分の愛情が足りないのではないか、しつけができてないのではないかと考えこんでしまう傾向があります。保護者の目を見ながら丁寧に噛みつきが起きた経緯を伝え、噛みつきが起きた後、その子に対して保育士が行ったケアや言葉がけも伝えます。噛んだ子の保護者は罪悪感と心配でいっぱいになり「うちの子が噛んでしまったお子さんの名前を教えてください、謝りたいです」と噛まれた子の名前を教えて欲しいと言われることがあります。しかしそこは噛まれた子の保護者への対応と同じく個人名は言いません。
まとめ
乳児クラスの担任になると切っても切り離せない「かみつき」。噛みつきが起きたことを悔やむより、保育士同士で話し合い、情報を共有し、どうすれば再発を防げるか話し合うことが大切です。双方の保護者へのケアとしておたよりに噛みつきについて載せたり、保護者会で話し合ったりして理解を求めることも必要かもしれません。何より噛んだ子、噛まれた子の気持ちに寄り添うことを一番に考えて接し、子どもの思いを代弁してあげることを心がけてくださいね。
ライタープロフィール
白川 佳代さん
保育士歴10年以上。自身の子育て経験を生かし、新卒保育士や子育てに悩む保護者の相談業務にも多く携わる。現在は認可保育園の園長。また、当サイトにコラムを多数執筆中。
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