園長に求められるリーダーシップ〜園を引っ張る人はこんな人がいい!〜2

前回に引き続き、園長としてどのようなリーダーシップが大切か、振り返っていきましょう。すでにご存じなことも多いかと思いますが、改めて意識して実践していただければと思います。

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6.専門性発達へのかかわり

質の高い保育を行っている施設のリーダーは、スタッフ一人ひとりに対し敬意を持って個別のサポートを行うと共に、スタッフに対して専門性を高められるよう刺激を与えていることがわかりました。
例えば、研修を受けることを奨励してみましょう。初期の導入的な研修に始まり、その後も継続なトレーニングが受けられることが望ましいです。

自治体で行われるキャリアアップ研修はもちろんのこと、全国保育士会や民間団体、園内・運営組織内研修、そのほか、本人が希望する研修に参加できるよう、誰もが参加しやすい雰囲気づくりやシフト調整等を行ってみてください。園長や管理職自身、あるいは運営組織が研修情報を収集し、参加希望者を募ってみても良いでしょう。
また、職員が誰でも見られるように保育雑誌を定期購読し回覧できるようにする、おすすめの保育情報サイトを共有するというのも良いですね。
運営組織で園内研修を企画したり、外部研修費の補助を行ったり、取得者に昇給・手当を出したりするのもモチベーション向上につながります。

◆研修は勤務時間内?時間外?

日曜日・祝日の実施や、ここ数年はオンラインやオンデマンドで実施されることもあるようですが、少なくともキャリアアップ研修や園内・運営組織内研修に関しては、勤務時間とみなし、連続勤務の状態にならないように配慮しましょう。
少なくない園で、休日を利用して受けるようにしている現状があるようですが、お勧めできません。お休みの日に研修を受けるとライフワークバランスが崩れやすいです(自主的に外部の研修を受ける場合を除きます)。
休日返上となっては、スタッフの負担が大きくなるのは当然のことです。また、キャリアアップにより得られる待遇改善にも見合わないでしょう。研修を受けるメリットよりもデメリットが勝ってしまうため、研修を受けるモチベーションは当然下がり、園や組織に対する信頼が失われてしまう恐れさえあります。

<ふり返りポイント6>

・あなたの園では、スタッフが研修を受けられるようにサポートをしていますか?
・次年度、キャリアアップ研修を受けられるスタッフを確認してみましょう。
・園内に研修を受けたいと思っているスタッフがいないか確認してみましょう。
・勤務時間内に研修をうけてもらっていますか?
スタッフがこれまでどのような研修を受けてきているか関心を持ち、それぞれの強みを継続的に把握していくことも大切です。

7.分散型のリーダーシップ

職場で責任のある仕事を任されていない職員は、離職率が高くなるということがわかりました。そのため、環境を管理する権限がゆだねられており、一人一人がリーダーシップを発揮することができる、分散型のリーダーシップが、保育の質を上げるためにも、離職を避けるためにも理想的であると言えそうです。誰もが責任を持っていることで、職員一人ひとりが自尊心と士気を高めることができると考えられています。

ただし、入職して間もない段階で責任を持たせることは、かえってストレスになるので注意が必要です。ある程度仕事に慣れ、保育目標の共有、共通認識が持てたところで、徐々に自己裁量で行える部分や、任せる部分を増やしてみてください。

◆リーダーシップの偏りに注意

リーダーシップを持つスタッフが一部に限られると負担も偏り、大きなストレスとなりかねません。結果、負担が増えることが不安でキャリアアップを避けるスタッフまで出てきてしまう恐れもあります。負担を分散するうえでも、一人一人がリーダーシップを持てることが大切なのです。

<ふり返りポイント7>

・あなたの園では、一人ひとりがリーダーシップを持てていますか?
・責任が主任やリーダー職に偏っていませんか?
リーダーシップをそれぞれが持っていると、足並みがそろわなくなるのではと心配になるかもしれません。しかし、これまで見てきた園全体での保育目標の明確化、共通の認識を持つ、効果的コミュニケーションなどができていれば、保育の質に影響が出るようなばらつきはほとんど出ないでしょう。

8.学びの集団とチーム文化の構築

役職や資格、経験に関わらず、スタッフ間で学び合い、チームとして動ける組織風土が大切ということが分かりました。そのためにリーダーからスタッフに働きかけることが大切です。

例えば、
・立場の違いによって大きな上下関係ができないようにする
・関係者全員が信頼と尊敬をし合える関係が持てるようにする
・専門知識を共有し合えるようにする
ことなどが大切です。
その点では、職員同士が日常的にやり取りできるよう、ノンコンタクト タイムの確保も重要です。

◆ノンコンタクト タイム

休憩時間とは別に勤務時間内に子どもたちから離れる時間。連絡帳の記入、教材の作成、遊具の整備、打ち合わせ、保護者対応、自己研鑽などを行う。日ごろの保育の見直し、残業の予防ができ、保育の質の向上、保育士の負担軽減の効果がある。

<ふり返りポイント8>

・あなたの園では、スタッフが学び合うことができていますか?
・あなたの園では、ノン コンタクトタイムを設定していますか?
定期的なミーティングができることが理想的ではありますが、普段のかかわりの中でも学び合える組織風土づくりをしてみてください。他のスタッフからの情報を、「〇〇先生が教えてくれたんだけど…」と伝達するのも良いですね。

9.家庭との連携

ご家庭(保護者)と協力関係を築くことは、質の高い保育を行う上で、やはり重要でした。ご家庭と園とで連携することは、幼児期の子どもの言語、認知、自尊心に大きな影響を与えます。
ご家庭と園との関係は、ともすれば園が子どもの様子を一方的に伝える形になりやすいです。しかし、保護者との相互作用があることで、親は自分自身の子育てを肯定的にとらえられるようになり、より子どもに適した教育環境を整えることにつながっていきます。
日常的な関わりや行事を通して、子どもを支えるチーム関係を築くことを、意識してみてください。


◆貧困・格差問題解消の一助にも
英国の研究では階級差について触れられていましたが、日本でも貧困や格差問題はあり、家庭環境は様々です。子どもが家庭で与えてもらえる教育にも差があります。発達年齢に対して提供されることが望ましい教育や生活が環境的に受けられていない場合もあります。しかし、保育園に通うことで、一定レベルの教育や発達の支援を受けることができ、自分の子どもの成長を知ることで、親はより適切な教育を与えることができるようになるのです。

◆より望ましい家庭での関わりに気づける
また、園では集団場面でしかわからない成長を知ることができます。あるいは、発達面の気がかりな点が見え、早期に支援につなげられることもあります。家での子どもの様子だけでは気づきにくい、より望ましい成長のサポートに気づいてもらうことができます。

<ふり返りポイント9>

・保護者とのかかわりが一方向になっていませんか?
・保護者と相互的な連携はできていますか?
・保護者参加型の行事を行っていますか?
成長した点を連絡帳やお迎えのタイミングなどに伝え、ご家庭での様子を聞いてみましょう。家庭ではできていないことでも園ではできている場合もあります。両方の状況をお互いが共有することで、子どもの成長を多角的にとらえることができます。
もしも、家ではできていなくても、「家では甘えたい気持ちがあるのかもしれませんね。園で頑張れているのも、普段、ご家庭でしっかり伝えてくれているからだと思いますよ」などと、ご家庭での指導と結び付けてみると、日頃の子育てを肯定的に捉えてもらいやすいでしょう。

10.管理と指導のバランス

園長として、管理することと、保育のリーダーシップを取ることのバランスを取ることが大切ということがわかりました。園長が負担に感じる業務について調べた調査では、管理業務が最も大きな負担に感じられているという結果が出ていました。
園長になる方は、これまで、子どもやご家庭(保護者)と関わることに喜びを感じ働いてきた方が多く、それが、園長になったことで、管理業務に追われ、これまでの最大の喜びを得られない状況になりやすいようです。

<ふり返りポイント10>

・管理業務が負担になっていませんか?
・管理業務のICT化や簡易化、分担の可能性はありませんか?
・園長であるあなた自身が、相談できる場所はありますか?
園長という立場は園内ではほとんどの場合唯一の存在です。なかなか周囲に相談しづらいこともあるかもしれません。そういった場合は、園長同士で情報交換を行うのもおすすめですし、運営組織に相談できる体制があればどんどん活用していきましょう。外部機関のコンサルティングを受けるのも一つの方法です。

運営組織では、園長がリーダシップを十分に発揮できるよう、管理業務に関するサポートを行っていくことも大切です。

おわりに

日々の業務を振り返ることができましたでしょうか?
今回は英国の研究から、日本の状況を織り交ぜつつ、大切なことについて見ていきました。人材不足の問題から、なかなか実現できないものもあるかと思いますが、できることから進めていただければと思います。状況は確実により良い方向へ進んでいきます。

皆さんの保育園が、これから更に子ども達、ご家庭、スタッフの笑顔があふれる、素敵な園になっていかれることを願っております。

≪心理カウンセラープロフィール≫

松本 いずみ
公認心理師。明治学院大学大学院心理学専攻修士課程修了。ストレスチェック実施者研修修了。スクールカウンセラーとして都内中高で12年間従事するかたわら、メンタルヘルスサイトにて一般向けに心理学コラムの執筆とメールカウンセリングを担当。プライベートでは0歳と7歳の2児の母。最近は「あつまれどうぶつの森」を家族で楽しんでいます。

参考

SirajBlatchford & Manni 2007 Effective Leadership in the Early Years Sector (ELEYS) Study
PDFを開いてレポートを見る

上田淑子 2015 保育所・幼稚園の園長が保育の質の向上のために重要視しているリーダーシップ役割—予備的アンケート調査から―

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